カテゴリー: コラム

複数のキャラを含めたイラストを描くコツと、環境への投資について

イラストにはさまざまな難易度が多岐に渡り配置されています。まず、そもそも人間が描けない。それなりに人間の形になったとしても、全体のバランスがガタガタになってしまっている。
全体のバランスがそれなりにとれるようになったとしても、それはひとつの方向や構図の話であり、身体を動かしたり、顔を傾かせたりすることができない。また、バストアップばかり描いてしまう、全身は難しい、またはその逆等、悩みはつきません。

また、一人の人間を納得のいく形で描けたとしても、そこから二人目を書き加えるのもそれなりに難易度が高いです。一人目で持っていた描く気力が、二人目まで続くとも限りません。

そういった時、作業を分けてみると楽になることがあります。
例えば、一人目のキャラを完成させます。

この、完成したイラストを使って、二人目を後日書き加えます。連続で描いているわけではないので、この方法ならば気力も持ちます。

バランスのそれなりに取れたイラストならば、多少目の向きなどを変更しても違和感は出にくいので、この、作業を分けて考えるやり方はとても有効だと思います。

イラストは芸術の類に入るので、どうしても1から10まで、通して完成させねばならないという固定概念がありますが、作業だけに注目して考えれば、イラストも仕事も変わりはありません。仕事は、時間や作業を分担して行う行為です。これをイラストにたくさん応用しても良いのではないだろうかと思いました。

また、少し話が変わりますが、作業を分担するという意味では、背景やパース等を機械に任せるという発想もありだと思います。一昔前までは、人物から背景まで、すべて人間が手作業でやっていました。しかし、昨今はデジタル環境の発達から、人物以外のものはほとんど3D等で機械にある程度任せることが出来るようになっています。また、これらを線画に変更してくれる、その線画をまるで手書きのように組みなおしてくれる等、便利な機能まであります。

デジタル環境をそろえるには、それなりの金銭的投資が必要なので、どうしても学生の内は難しいと思いますが、自分で自由に使えるお金が入るようになってからは、作業を分担することにお金を投資するのは大変役に立つと思います。

また、キャラを複数描く際の、配置やポーズを機械に頼って作るのも作業効率化になるので、環境への投資をためらっているかたは、ぜひ一考されてみてはいかがでしょうか。

イラスト向上のための読書5

イラスト向上の~コラム概要については、こちらをご参考ください。

(小説のネタバレを含むのでご注意ください)

【劇場】
著:又吉 直樹

前作の火花で、小説家としても有名になったピース又吉さんの二作目の小説です。
前作の火花が好きだったので劇場も読む前から楽しみにしていたんですが、期待通り面白かったです。

内容は、劇の演出家である主人公の男性と、女優を目指して上京してきた女性の恋愛の始まりから終わりまでの話です。
主人公の男性が、ヒロインの女性と出会い、付き合っていく過程が割と特殊なのですが、これを素敵と取るか怖いと取るかは人それぞれだと思います。個人的には怖いけど面白いと思いました。

人物たちの背景や、物語の主体が恋愛であること、舞台が東京であることだけを見ると、ごく平凡な内容に感じがちですが、作中の男性の考え方や行動原理がとにかく飛んでいて、行動が常に読めません。また、彼の恋人になったヒロインの女性も、彼と付き合っていけるだけあってそれなりに思考がぶっ飛んでいて、前半はひたすらお似合いな彼らの私生活を楽しめます。

ただ、行動や思考が逸脱していることと、お互いの将来を考えていくことはまた別のことらしく、とてもお似合いだった彼らの生活は、男性が演出家として何も目が出ず、また、女性が歳をとり、20代から30代へと変化していく過程でかげりを見せていきます。

後半で、徐々に徐々に女性が壊れていく様が目の当たりにできるのですが、彼はそんな彼女に違和感や反発を抱き、冷たくなっていきます。
最終的に、彼女が完全に壊れてしまってから初めて、彼は彼女をたくさん気遣ってあげるようになります。この手の話は現実でも腐るほど聞きますが、こういったパターンがあるのかと疑うほど大体同じ末路をたどるなと、読んでいてそこも面白かったです。

個人的には前作火花の、訳の分からない内に訳の分からない感動を得る、ジェットコースターのような話が好きなのですが、人に勧めるのなら劇場だなと思いました。語り部の思考回路の飛び方はそのままに、劇場のほうが色んな方に読みやすい話だと思います。

あと、とにかく文体が詩的で素敵なのもすごく好きです。もしかすると書いている本人はまったくそんなことは気にせず書いていらっしゃるのかもしれませんが、もしそうだとしてもそれはそれで「本をたくさん読まれている方なんだなぁ」という尊敬が産まれます。多方面で好ましいので、劇場に限らず、火花もおすすめです。

有名人だからという色眼鏡を外しても、大変クオリティの高い作品なので、興味のある方、興味はあったけど悩んでいた方は、この機会にぜひ一読されるのはいかがでしょうか。

今回のご紹介は以上です。
読書が誰かの息抜きかつ、イラスト向上になれば幸いです。

イラスト向上のための読書3

こちらは、以前書いた「小説を書いたら絵が上手くなった話」の派生記事です。
読書により読解力を上げることでイラスト技術の研鑽につながること、また個人的な趣味をふんだんに混ぜて、最近読んだ本のご紹介をしています。

普段とは見方の違うイラストの練習法として、よければご参考ください。
(ネタバレが多く含まれるのでご注意ください)

【あきない世傳金と銀】
著:高田 郁

かの有名な時代小説、みをつくし料理帖を書かれた作者様の次作です。シリーズもので、現在は11巻まで刊行されています。
みをつくし料理帖が好きだったので、次作が出た瞬間「これは面白いだろうな」と思い、さらに一気読みがしたいがためにある程度巻数が出そろうまで読むのを控えてました。今ようやく手につけて読みまくっています。睨んだ通りとても話が面白い。

比較的裕福な学者の家に産まれ、優秀な父と兄、働き者の母と可愛い妹に囲まれながら幸せに暮らしていた主人公の幸ですが、ある日突然家族を襲った不幸により父と兄を奪われ、また、自らも家族と離れ、ひとり商家に奉公(働き)に出ることになります。

奉公始めは、慣れない環境や離れた家族への想いに振り回されますが、利発で勤勉な幸は段々と奉公先に慣れ、また、我慢強い幸に感心したり呆れたりした周りの人も(一部を除いて)幸への対応が柔らかくなっていきます。

幸が奉公先に大分なじんだ頃合い。勤め先の商家を営む商人一家の若い主人が結婚し、嫁をもらいます。しかし、この若い主人は結婚前から難があり、この難が商家に不穏を呼び寄せ……。といった風に話が始まり、進んでいきます。

一巻を読み終わってからすぐ思ったのは、切り上げ方が上手い。です。
幸がこの先どんな風になってしまうかのにおわせが上手く、次がものすごく気になります。ついつい買ってあった2巻3巻のあらすじを先に読んでしまうほどに。

みをつくし料理帖の澪ちゃんの時も、澪ちゃんが目も当てられないくらいかわいそうな目にあいつつも、本人の才能と忍耐強さで難を乗り越えていったので、今回の幸ちゃんも、同じように、しかし商いという別の世界でがんばっていくんだろうなと思いました。

女性が苦難を、自分の才覚と才能で乗り越えていく話が個人的にとても好きなので、この先もすごく楽しみです。

あと、時代小説の中でも、みをつくし、あきないシリーズを書かれる作者様の文体はとても読みやすく、専門用語等も簡単に調べられる範囲に抑えられわかりやすいので、時代小説を今まで読んだことがない!という人にも大変おすすめです。(私の時代小説デビューもみをつくしからでした)

読書はイラスト練習のお供にも最高なので、家にこもりがちな今の時期に一冊どうでしょうか。

イラストに使用するペンについての考察

絵を描く時に使用する道具は、多種多様だと思います。その中でもとりわけペンは数多くの種類があり、絵を描くだけでなく、文字を書く際にも常用されています。

イラストを描き始めた際、鉛筆で紙に描いていましたという人は多いのではないでしょうか。

逆に、昨今ではデジタル環境の進化、浸透により、デジタル環境を手に入れたので絵を描き始めた。という人も多いと思います。

アナログが得意な人はデジタルが不得意で、デジタルが得意な人はアナログが不得意である、というのはよくある話です。どちらも使えるにこしたことはないのですが、そう上手くはいかないのが実情だと思います。

この、扱う環境によって出る不具合がなぜ起きるのかを考察していたのですが、おそらくペンの違いが最も大きいのではと仮定しています。

ペンの違いというのは、想像以上に大きいです。
デッサンをする際も、扱うペンによってその性質も描き心地も相当変わってきます。
鉛筆でデッサンをする際は、2Hから6Bなど、あらゆる濃さの鉛筆を用意します。影や明るさの表現が、鉛筆の濃さの違いで書きやすい、書きにくい、表現しやすいしにくいがあるからです。
鉛筆の数値は、濃さだけが違うのではなく、その柔らかさも違います。Bの数値が高いほど柔らかく、Hの数値が高いほど固くなっています。この時点で、同じ鉛筆だというのに書き心地が大分違ってきます。
また、鉛筆で行う精密デッサンとは違い、木炭だけを用いたクロッキーなどもあります。こちらは単一の木炭を用いて、おおらかな絵を描いていきます。この時の書き心地は濃い鉛筆のさらに上をいく柔らかさで、ぬるっとした感覚で絵を描きます。

デジタルは逆に、同じ固さのペンを用いて、ペンのシステムごとに別の表現を書き加えていきます。例えば、デジタルで木炭ペンツールがあったとしても、実際の木炭とは書き心地が天と地ほども異なるのです。

このように、ペンの種類というのは複雑で、それゆえに、扱う人間の脳を混乱させる。それが、アナログとデジタルの不得意を生み出すのだと思います。。

この、脳の混乱を改善するには、ペンが複雑であることを念頭において、使いたいペンの仕様を、自分の得意な仕様とすり合わせる事が重要だと思います。ペンを複数扱うというのは、思っている以上に難易度の高いことなのだと思います。

絵を描くことは考えることと同意義だと私は思います。ですから、ペンが上手く扱えないときは、一度絵を描くことを置いて、深く考える癖をつけてみるのはどうでしょうか?
普段やらないことがやりたいことの貢献になることは多いので、ぜひご参考ください。

イラスト向上のための読書2

イラスト向上の~コラム概要については、こちらをご参考ください。

※小説のネタバレがお好きでない方はご注意ください。

【なぜ銅の剣までしか売らないんですか?】
著:エフ

武器屋で働く青年が、各地の町で売られている武器の固定化システムに疑問を持ち、さらにその制度を(勇者に選ばれてしまった弟のためもあり)改正しようと旅にでる話。

めちゃくちゃ面白かった。

はじめの町には銅の剣が売られ、つぎの町には鉄の剣が売られている。という、ゲームなら必ずといって良いほど固定化されている武器販売のシステムに疑問を持つ、という側面を殴るような奇抜な発想を持った主人公が旅に出る。この時点で「これ、どんな話になるんだ??」と引き込まれるのですが、その後がまさかの「チューリップバブル」「黒〇奴〇問題「ア〇ン戦争」等を町ごとで体験、解決していくという展開。
あれだけ複雑な歴史問題をドラクエ風に書き換えることができるんだ……すごい……と、本編を書かれた方の、複雑な物事に対する読解力と、それを単純化して書き換える能力に脱帽しました。同じ作家さんで別の本が出ましたらぜひ読みたい。

個人的には、強者の理屈をごり押ししていく成り上がり貴族商人が吐き続ける言葉の暴力が最高に楽しかった。優秀な人ってこういうところあるよねわかる。できない人の背景とか気持ちを考えないよね。努力しろ努力しろっていうけど、努力も才能なんだよ。でもそこがわかってないところがリアルで楽しい等、うんうん納得してしまった。
最後は改正が間に合って、弟の勇者任務が解任されてハッピーエンドのオチかな?と思ってたのですが、話の下地にア〇ン戦争を突っ込むような作者さんが、そんなオチ持ってくるわけないですよね。むしろ、途中で劇作家の脚本を出した時点で、あれは伏線だったんだと最後に気づきました。
経済に正解がないことと、人の幸せに答えがないことは一緒だなと考えさせられました。

個人的な感想が大分混じりましたが、本当に面白い本でした。ドラクエ風で親しみやすく、文体が読みやすく、どんでん返しも大きく、しかもそれを腑に落ちやすい場所に持ってきてくれます。本を読みなれてない方にもおすすめできる一冊です。

本を読むのは、イラストの練習の息抜きにもとても良いので(私がそもそも読書を練習の息抜きにしている一面があります)、ご興味ある方はこれを機に、読書を練習ルーティンの一部に組み込んみてはいかがでしょうか😊

アナログからデジタルへ移行した際の話

去年の末ごろから、お絵描き環境をデジタルにフル移行しました。

もともとはアナログで絵を描くことを主にしていて、どちらかといえばデジタルで1から描くのは苦手な方でした。
アナログのなにが良いかといえば、なんといっても紙に描いた際の描き心地です。ペン先と紙の適度な摩擦が心地よく、これが好きでデジタルに移行できない方も多いのではないでしょうか。
また、紙とデジタル画面では、その発光の具合も違います。紙は自ら発光はしないので、自然光を吸い取る形になり、見え方が優しくなります。
デジタル画面は逆に自ら発光するので、少しまぶしい印象がありました。

率直に言えば今でもアナログのほうが好きなのですが、それでもデジタルに移行しようと思ったのは、単純に効率の違いが顕著だったからです。

アナログは、描いたものを描きなおすのに相当な苦労が必要です。ですが、デジタルは、描いたものを何度でも、簡単に修正することが可能です。
さらに、デジタルは道具が一つのツールに収まっており、出し入れ等の手間なく便利です。そのうえ、場所をほとんどとらず、ものの管理についてもアナログのそれを上回っていました。

私は書き心地よりも効率に気持ちが傾いていたので、居心地の良い紙を脇において、デジタルへと移行を決意しました。(今でも紙は好きで使っていますが)

ただ、やはり苦手なものは苦手だったので、まずデジタル環境をアナログへと近づける試みをしました。液タブに、やすりのように削れると評判のペーパーライクフィルムを貼り(このざらざら感が紙に近かったので、とても効果的でした。ただしペン先はえぐれるように削れたので後にステンレス芯に変えましたが)、もともと使っていた0.3ミリのシャープペンシルを1.3ミリの極太シャープペンシルに変え、デジタルペンのペン先の書き心地に慣れようとしたり、液タブの画面の明るさをかなり下げて、紙の色合いに近づけたり、特殊な鉛筆風ペンツールをたくさんDLして試してみたり、リアルA4サイズの大きさに近づけるため、液タブを縦置きにして書いてみたり。

結果的に、いろいろ試しただけあって効果があり、2~3か月ほどかけてデジタルに移行することができました。
そして、出来たら出来たで、あれほど努力していたのはなんだったのだろうか。と思うほど、上記したやり方をほとんど使わなくてもさらさら描けるようになりました。脳の馴化ってすごいですね。

私のように、アナログからデジタルへ移行する際、苦戦したり挫折した方も多いと思います。
なので、同じ悩みで苦戦している方もしいれば、成功事例の一つとして、上記のやり方をよければご参考ください。

イラスト向上のための読書1

以前の記事で、「小説を書いていたら絵が上手くなった話」を書かせていただきましたが、その中で、読書をしてもイラスト向上の一助になります。とも書きました。

小説を書くのはハードルが高くても、読書は本を開いて読むだけですので、こちらの方が取り組みやすいと思い、今回から定期的に「おすすめの書籍」紹介をしていきたいと思います。(読書が大好きなので、半分ほど趣味の取り組みです)

読解力は、幅広い解釈や視点を持つことで鍛えられると思いますので、色んなジャンルから面白かった小説を取り上げていきたいと思います。昨今のものから昔のもの、時代小説、ファンタジー等、お好きなジャンルの本を選んでお読みください。

※小説のネタバレがお好きでない方はご注意ください。

【高円寺純情商店街】
著:ねじめ正一

商店街で乾物屋を営む家族の一人息子、正一少年視点の物語。
かつをぶしを削るシーン始まるのですが、描写がリアルで美味しそう。
6章構成の連続した短編で、地の文にひらがなが多く、難しい漢字もほとんど出てこないので、大変読みやすいです。(昔、小説を書く時は小学生にも読める文章を書くのがプロだという記事を読んだのを思い出しました)大人らから学生さんまで楽しめる文体だと思います。
また、ページ数もさほど多くないので、小説を読みなれていない方にも優しい分量だと思います。

一文の書き方が綺麗な方だな。と思っていたのですが、あとがきによると筆者の方はプロの詩人の方らしく、詩の能力が小説の能力を助けているのだなと思いました。
また、あとがきにて、「詩を使う筋肉と散文を書く筋肉はちがう」と書かれていて、とても同感しました。以前の記事にも書きましたが、この考え方はイラストにも言えることだと思います。

個人的に特に面白かった話は、4章の「にぼしと口紅」です。
乾物屋のとなりに仮店舗として化粧品店が入り、そこで働く若くオシャレな女性たちが、商店街に活気を与えていく。という物語です。
地元密着、言い方を変えれば封鎖的な商店街で、一見異分子とも見える彼女たちですが、商店街の人たちに避けられることなく、また、商店街への献身的な行動をもって、商店街になくてはならないといった感じにまで溶け込んでいきます。

なかでも、商店街で暮らす女性たちへの気遣いが美しく、その気遣いの中で、商店街の女性が女性としての楽しさを思い出していく様も読んでいて楽しかったです。いくつになっても女の子だよね、というやつです。

また、個人的に、最後の商店街の店を一つ一つ紹介していくコーナーが面白かったです。全体的に大分皮肉めいている。それが人間味あふれていてとてもよかったです。

以上、書籍の紹介でした。
ぜひ、いつもとは違った目線のイラスト勉強として、ご参考いただければ幸いです。

小説を書いていたら絵が上手くなった話

今はイラストを楽しんでいるのですが、一時期、私は狂ったように小説を書いていた時期がありました。(今でも割と狂ったように書いていますが)
理由は単純で、小説を書くのが楽しかったからです。おそらく100万字くらい書きました。書きまくりすぎて今は一時休止中みたいなところがあります。

小説のこやしになるだろうという考えのもと、読書もしまくりました。これは勉強のつもりで始めたのですが、結果的に凄く楽しいという読書沼にはまり、結果的に400冊くらい読破していました。

この傾向から分かるように、一回はまると沼の底まで落ちていく性分にあります。
それはさておき。

ここからが本題なのですが、小説を書きまくり本を読みまくった結果、意外なことにイラストが上手くなりました。
小説を書く前からイラストはそれなりに書いていたのですが、その時よりも、おそらく考えて書くようになったのが要因かと思われます。

今までは、なんとなく線を引き、なんとなく体のパーツを描いていたのが、線の表現のことを考え、パーツのことを考え、表現の幅を考える、など、イラストというジャンルが、言葉を用いないものだとしても言語化可能だということを、私は執筆力と読解力を底上げした後に気づきました。面白かったです。

書く力と読む力を同時に使ったのもよかったのかもしれません。インプットとアウトプットはよく、セットで行えと色んな書籍に書いてあります。それは、お互いを使うことでよりお互いの力を引き出せるからだと思います。

また、能力とは全身の筋肉と同じで、何か一つが発達していもアンバランスになり、傾いて上手く動けなくなるのかもしれません。ですから、絵の能力だけを鍛えるよりも、一見関係なさそうな能力を鍛える、例えばイラストが右腕の筋肉だとすると、小説は腰の筋肉だったりするように、色んな場所を鍛えることで、自分のバランスをとるのが良いのかもしれません。

これと同じく、一時期趣味でチェスを狂ったようにやっていたのですが(それなりに勝てるくらいまでは上達しました)、チェスを行う時の、「それぞれの駒の能力を把握し、繊細に推し進め、ある程度の展開着地を予測する」という能力も、イラストや小説の一助になりました。

新しく趣味を始めるのは大変なことなので、もし、イラスト意外にも「これが趣味」というものが何かあれば、イラストに応用できるのでは?と、考えてみるのも楽しいかもしれませんし、実際に助けになるかもしれません。

こういった考えが目の前を開く可能性になることもあるので、ぜひ、考えの一助としてご参考ください。

漫画を描いていた時の話

それなりに絵が描けるようになってから、漫画を描くのにも挑戦してみようと思い、しばらく漫画を描いていた時期がありました。

その時に驚いたのが、イラストと漫画では全く勝手が違う、ということです。イラストは、好きなキャラクターを描いて、良い感じの背景をさくっと描き込めばそれなりのものになっていたのが、漫画だと、人物の立ち位置からパースを計算しないといけないし、人物の絵が次のコマに移動する際、その行動に沿っていないといけない。

さらに、コマの形や大きさはバラバラで、とにかく背景と人物の綺麗な表現方法が分からないなど、めちゃくちゃに躓きました。(コマの配置についてはその後研究し、別記事で簡単なやり方を紹介しているのでぜひご参考ください)。

また、話づくりもそれなりに難しかったです。私は趣味で小説も書いているので、話づくりにはそれなりに自信があったのですが(面白いかどうかはさておき)、漫画と小説では勝手が違い、小説で書く際の感覚を、漫画の尺に落とし込むのもむずかしかったです。(ものすごく楽しかったですが)

あと、漫画の背景パースというのがなかなか曲者で、3Dを勉強していたので時短のため、背景を3Dでまかなおうと思ったのですが、二点透視表現が3Dで再現することが難しく、これはしばらく大量の資料を読む羽目になりました。

最終的には、二点透視はXYZ軸の固定もしくは焦点距離の調整もしくは平行投影のカメラの設定で何とか再現できると分かりましたが、この理屈が難しくていまだに「絶対にこう」という答えが出ていません。精進したいところです。

一昔前は、これらの作業をすべて手書きで行い、また、その修正も調整も手で行っていたと思うと、ものすごい労力だと思いました。一人で描けるものではないので、組織で漫画を描くというのは理にかなっていると思います。

ただ、アナログ漫画表現は、見てそれと分かるくらいの綺麗さがあるので、個人的には大好きです。アナログインクやアナログトーンにしか出せない味わいがあるのだと思います。デジタルで表現できたら素敵なのですが、今の技量では難しいので、こちらも精進したいと思います。

イラストは描けても漫画は描けない。という言葉はよく聞きますが、実際自分で描いてみて確かに。と思いました。漫画の難易度は非常に高く、だからこそ、狭き門というか、ハードルが高いというか、それゆえにたくさんの人に愛されるツールなのだなと思いました。

また機会があったら挑戦してみたいです。

参考になった書籍orサイトの話

今日は、イラストにとても参考になった書籍orサイトの話をしようと思います。

「スカルプターのための美術解剖学」

とても有名な美術解剖学の本です。筋肉の写真が細かく分類、整理され、さらに筋肉が色分けされているので、どこの部位がどのような名称なのか、どのようについているか、どのような動きをするのかがとても分かりやすかったです。

特にためになったのは、首回り、肩回り、胸部の筋肉です。首や肩、胸部などはよく描く部位ですが、正直この辺りの筋肉がどのように配置され、どのように可動するのかよく分かっておらず。きちんと美術解剖書で筋肉を学んだ結果、以前よりさらにパーツが書きやすくなりました。

また、筋肉を知識としてためておくと、逆に「ここはデフォルメした方がイラストっぽい」等、逆説することも多少できるようになってきました。

画像がたくさん入っている本なので、模写にもおすすめです。
ただ、よく「一冊丸ごと模写しよう」という意見を見かけますが、個人的に一冊丸ごと模写はおすすめしません。確かに、一冊まるごと模写ができればそれだけの力がつくと思いますが、正直そんなことをしたら疲れるし飽きるしでモチベーション自体が下がります。
好きな場所を好きな時に見て、好きな感じに勉強するのにも向いている本だと思うので、気になった方はぜひご参考ください。

「PoseTrainer」

時間制限やモデルの種類など、好みの設定をしてからひたすらクロッキーができるサイトです。美術解剖学を勉強してからこのサイトでひたすらクロッキーをすると、色々な角度で覚えた筋肉が見られるのでとても楽しいです。

また、モデル画像にグリッドをつけることができるので、形を上手くとらえにくい時は、グリッド模写をすることもできます。リアルよりの体型なので、絵柄によっては合いにくいこともありますが、基礎的な練習を地道にやる場合とてもおすすめです。

「風立ちぬ スタジオジブリ絵コンテ全集19」

こちらはイラスト教本ではなく、かの有名なジブリ映画の絵コンテ集です。
構図や画面の比率等に悩みまくっていた時期に購入しました。

分厚い本の中に大量の絵コンテが収録されていて、ラフ画でありながらそのクオリティの高さに脱帽します。
大変美しいので、眺めているだけでも楽しい一冊ですが、一枚一枚の構図がとても見栄えがいいので、構図の研究をするのにもってこいの一冊でした。これ一冊で色んな構図配置が発見できます。

以上、参考になった書籍orサイトでした。
書籍やサイトを調べるのも好きなので、また良いものが見つかりましたらご紹介したいです。

3Dの話

絵の練習に役立つだろうと考え、3Dソフトに触れ始めて大分日が経ってきました。
私が使用しているソフトは、かの有名な「blender」であり、高機能でありながらも無料で使用できるという慈悲深いソフトです。

まだ、3Dのすの字もさわれなかった頃は、そもそも3Dのソフトに何があるかもしらず、「3D ソフト」といった風に検索をしてました。なつかしいです。

その時に、プロが使用するソフトは大変に高額だということを知りました。とてもじゃないが手が出ない。
しかし、3Dの世界は奥が深く、その人の望む形のソフトがいくつも存在することもそこで知りました。色々触ってみましたが、blenderが一番しっくりくるなと思いました。

blenderは、お絵描きに使用するだけでなく、実際に3Dの練習をするのもすごく楽しいです。


画像は、youtubeのML/Chチャンネル様のグラスを作る動画を参考にblenderで作成したCGです。

あと、お絵描きソフトに3Dを組み込めるように開発されたクリップスタジオは画期的だと思います(コミスタの時代から3Dは使えたようですがそちらは触ったことがありません)。
クリスタだと、残念ながら3Dを二点透視で表現する際の調整がソフト内で出来ないため、そこが難点になりますが、ちょっとした背景や小物をさくっと入れてしまう分にはなんの問題もないので、大変重宝しております。

blenderもクリスタもそうですが、3Dオブジェクトを線画にする機能が標準装備されており、これらも大変役立っております。この機能は初めて知った際は衝撃的でした。絵といえば手で描くものという先入観があったので、まさか機械で線画を起こせるとは思いもしませんでした。

一日の時間は限られているので、手短に終わらせられる場所は手短にしていきたいので、作画に役立つツールはどんどん活用していきたいです。

さらにblenderには、有志の方が作成してくださった、作業をより効率化できるアドオンというものがあります。(後付け装備の便利機能です)こちらは、無料のものから有料のものまでたくさんあり、海外のサイトでは専門の販売サイトも存在します。

海外といえば、3Dオブジェクトはまさに海外販売が盛んであり、私は3Dの材料や知識を得るために英語を勉強するモチベーションが産まれました。英語が読めるようになれば表現の幅がもっと広がると信じているので、とりあえず英検2級を目指して現在頑張っています。

以上、3Dの話でした。
3Dは本当に便利なので、これからも絵の上達に貢献できるよう、こちらのジャンルもより勉強していきたいです。

集中力の話

ここしばらく、絵の練習に本腰を入れて取り組んでいました。できることはかたっぱしから取り組み、模写、イラスト研究、クロッキー等々。とにかくなんでもやっていました。

その中で、クロッキーをしていたときの話です。

クロッキーをしていて、とりわけ悩んだのが自分の集中力でした。きらびやかなイラストとは違い、クロッキーは単調な作業が多く、また、大きな成果を得られているという実感を得るのも難しいので、飽きがちな作業でした。

もちろん、クロッキーのコツなどの記事や動画をたくさん調べ、自分なりに取り込んではきましたが、それでも、単調であるという性質は変わらず、気が乗らない日が続いてしまうことも多々ありました。

これはいけないなと思ったので、一時期、クロッキーのような単調な作業をしっかりとこなせるにはどうしたら良いか、その原因から考えていました。

その結果、「自分が飽きる時間自体を探ればいいのではないか」という考えに行きつきました。

単調な作業をいかに楽しくするかよりも、単調な作業を続けた際、自分はそれを何分で飽きるか。に焦点を当てたわけです。

すると、きっちり「15分」ほどで飽きることがわかりました。

これに気づいたあとは、この15分は必ずクロッキーに集中し、15分が過ぎたら別の作業を30分ほどはさみ、それが過ぎたらまた15分、クロッキーに集中するというルーチンをつくって作業を回してみました。

結果、このやり方は大変効果があり、総時間で2~3時間ほどクロッキーができるという状態にまでなりました。

後で買った、勉強に関する本を読んだ際にも、同じようなことが書いてありました。長時間同じことを続けるよりも、集中が持つ短時間のタスクと複数繰り返し、それを毎日の習性にした方が、効率よく伸びてゆくそうです。

このやり方は今も続けていて、クロッキーに限らず、素体やさんの素材イラスト、色塗りの勉強、読書など、さまざまなことに応用しています。

飽きっぽいのは損だなと、今まではずっと思っていたのですが、それは生まれ持った脳の特性なだけで、損でもなんでもなく、ただ工夫すれば自分の理想通りの状態にまで持っていけることがよくわかりました。

このような体験が日に日に起きるので、イラストも勿論そうですが、好きな趣味を持っておくということは大事だなとも思いました。

これからも、初心と応用を忘れず、日々楽しく鍛錬していきたいと思います。

以上、集中力の話でした。