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※小説のネタバレがお好きでない方はご注意ください。
【なぜ銅の剣までしか売らないんですか?】
著:エフ
武器屋で働く青年が、各地の町で売られている武器の固定化システムに疑問を持ち、さらにその制度を(勇者に選ばれてしまった弟のためもあり)改正しようと旅にでる話。
めちゃくちゃ面白かった。
はじめの町には銅の剣が売られ、つぎの町には鉄の剣が売られている。という、ゲームなら必ずといって良いほど固定化されている武器販売のシステムに疑問を持つ、という側面を殴るような奇抜な発想を持った主人公が旅に出る。この時点で「これ、どんな話になるんだ??」と引き込まれるのですが、その後がまさかの「チューリップバブル」「黒〇奴〇問題「ア〇ン戦争」等を町ごとで体験、解決していくという展開。
あれだけ複雑な歴史問題をドラクエ風に書き換えることができるんだ……すごい……と、本編を書かれた方の、複雑な物事に対する読解力と、それを単純化して書き換える能力に脱帽しました。同じ作家さんで別の本が出ましたらぜひ読みたい。
個人的には、強者の理屈をごり押ししていく成り上がり貴族商人が吐き続ける言葉の暴力が最高に楽しかった。優秀な人ってこういうところあるよねわかる。できない人の背景とか気持ちを考えないよね。努力しろ努力しろっていうけど、努力も才能なんだよ。でもそこがわかってないところがリアルで楽しい等、うんうん納得してしまった。
最後は改正が間に合って、弟の勇者任務が解任されてハッピーエンドのオチかな?と思ってたのですが、話の下地にア〇ン戦争を突っ込むような作者さんが、そんなオチ持ってくるわけないですよね。むしろ、途中で劇作家の脚本を出した時点で、あれは伏線だったんだと最後に気づきました。
経済に正解がないことと、人の幸せに答えがないことは一緒だなと考えさせられました。
個人的な感想が大分混じりましたが、本当に面白い本でした。ドラクエ風で親しみやすく、文体が読みやすく、どんでん返しも大きく、しかもそれを腑に落ちやすい場所に持ってきてくれます。本を読みなれてない方にもおすすめできる一冊です。
本を読むのは、イラストの練習の息抜きにもとても良いので(私がそもそも読書を練習の息抜きにしている一面があります)、ご興味ある方はこれを機に、読書を練習ルーティンの一部に組み込んみてはいかがでしょうか😊