他人様のイラストを研究しようとする際、必ずといっていいほど当たる壁が、「イラストは写実とは異なる」という点です。
写実を元に考えてイラストを研究しようとすると、どうしても「ここがおかしい」「あそこがおかしい」という部分が出てきます。しかし、そのおかしい部分がすごく魅力的だったりするのです。
この問題はなぜ発生するのかを個人的に調べてみたのですが、今のところ最も有力だと思ったのが「平行と奥行がひとつの人物に混ざっている」という仮説です。
平行と奥行がひとつの人物に混ざっている。というのがどういうことかといいますと。
まず、カメラにはざっくり二つの見え方があります。
平行投影と、透視投影とです。
平行投影は、すべての辺が平行になるよう撮影され、Xの奥行がありません。ものすごく遠いところから撮影した場合に起こるらしく、二点透視のパースなどもこの考えで行うととてもうまくいきます。
透視投影は、これとは逆に間近から撮影した際のものです。平行投影にXの奥行がないのに反して、こちらはXの座標が発生します。三点透視図法で考えるとわかりやすいかと思います。
問題は、この二つの見え方が、実際には同じ画像に表現されるはずがないのに対し、漫画やイラスト等の技法には、この二つの見え方が混ざり合っているかもしれないということです。
例えば、顔は平行投影表現で描かれているにも関わらず、足や腕などには透視投影が用いられ、しかし背景にはまた平行投影が表現されているなど。そういった表現が、イラストには多々見受けられるのです。
ですから、この「実際にはありえない表現が混ざり合っているかもしれない」という前提を入れておかないと、自分が混乱する羽目になるかもしれないのです。
なぜこのような技法が発生したかを考察した結果、おそらく、江戸時代の浮世絵がルーツなのではないかと思われます。
浮世絵は大変特殊な技法を用いられており、奥行があるようでありません。
そこから、西洋画法が日本に入り、漫画に進化していき、すべてがごちゃ混ぜになった結果現在に至っているのではないかと考えています。
(個人的な考察です。真意は謎につつまれたままです)
よく、好きな絵柄の絵師さんを研究せよ。という話を聞きますが、(これもおそらくですが)どの部分が平行であり、どの部分が透視であるかを見極めるという意味合いでもあるんじゃないかと思いました。
あまりこういった記事を見かけないので、「そういう考えもあるのか!」といった風に、絵の向上について悩むどなたかの助けになれば幸いです。